自分の生き方を考えるティーンたちが小説を描いた『ビューティフルからビューティフルへ』

性欲だけは一人前の高校生について、人生の輪読
り📚書店員 2026.09.28
誰でも

ページを閉じたあと、しばらく動くことができませんでした。

感動した、共感した、という言葉では足りない。

もっと重く、もっと静かな感情。

「畏怖」という言葉だけが、ようやくこの読後感に近づけるような気がします。

今回ご紹介するのは、日比野コレコさん『ビューティフルからビューティフルへ』。

私はこれまで日比野さんの作品を2冊読んできました。

社会の歪みを真正面から殴りつけるような鋭さ。
読むたびに、自分の価値観まで揺さぶられる作家。

そんな印象を持っていました。

けれど、本作は著者のデビュー作。

ここには、社会を撃ち抜く以前の、もっと根源的な才能がありました。

それは、「言葉」を扱う感覚です。

今回のレターでは、この作品が描く「言葉は誰のものなのか」という問いについて、ゆっくり考えてみたいと思います。

***

私たちの言葉は、本当に「自分の言葉」なのか

この作品を読んでいて何度も感じたのは、

日比野コレコさんは、言葉を選ぶというよりも、言葉そのものを解剖している作家なのだということでした。

短いフレーズ。

流行語。

SNSで見かける言葉。

誰かが吐いた何気ない一言。

そうした断片が幾重にも縫い合わされ、一枚の巨大な布になっていくような文章。

その感覚を決定づけたのが、作中のある一節でした。

「吐瀉物は自分が食べたもの。言葉も同じ」

読んだ瞬間、思わずページをめくる手が止まりました。

なんて乱暴で、

なんて正確なんだろう、と。

私たちは、自分だけの言葉で話していると思っています。

けれど実際には、

親の口癖。

友人の言い回し。

映画のセリフ。

ネットで見かけた文章。

本で出会った表現。

それらを身体の中へ取り込み、自分というフィルターを通して外へ出しているだけなのかもしれません。

つまり、

言葉とは、自分の所有物ではなく「世界から預かったもの」。

そんな感覚が、この作品には一貫して流れています。

***

コペンハーゲンで、私は身体で同じことを知った

この作品を読みながら、

私は今年参加したコペンハーゲンでのコンテンポラリーダンスのリハーサルを思い出しました。

世界中から集まったダンサーたちと毎日踊る中で、

ある日ふと、

自分の身体が他人の動きを「食べている」ことに気づいたのです。

誰かの重心。

呼吸。

癖。

歩き方。

それらが知らないうちに自分の身体へ入り込み、

やがて自分自身の動きとして外へ出てくる。

私はオリジナルだと思っていた身体も、

実は無数の他者を取り込んでできていました。

だからこの作品を読みながら、

「身体も言葉も同じなんだ」

という妙な納得がありました。

表現とは、

ゼロから生み出すことではなく、

誰かから受け取ったものを、自分という器で再構築する営みなのだと。

***

ここから先は購読者限定です。
高校生という年齢だからこそ生まれる「個性を求めながら同質化してしまう残酷さ」と、この作品がデビュー作でありながら突出している理由を掘り下げます。

***

「何者かになりたい」のに、みんな同じになる18歳

この作品の舞台は高校3年生。

進路。

恋愛。

将来。

何者にもなれていない焦燥感。

十八歳という年齢特有の、

「特別になりたい」という衝動が作品全体を覆っています。

面白いのは、

彼ら全員が個性を探しているにもかかわらず、

結局は同じ空気を吸い、

同じ言葉を使い、

同じテンションになっていくこと。

SNS世代の私たちにも、

あまりにも覚えがあります。

誰とも違いたい。

でも、

その「違いたい」という感情すら、

同じアルゴリズムの中で育っている。

この皮肉を、

日比野さんは驚くほど高い解像度で描いていました。

***

デビュー作だからこそ見える、本当の才能

私はこの作品を読んで、

著者への印象が完全に変わりました。

社会問題を描く人ではなく、

まず何よりも、

言葉という存在そのものを観察できる人。

だから社会も、

若者も、

アイデンティティも描ける。

根っこには圧倒的な言語感覚がある。

それが、このデビュー作にははっきり刻まれていました。

読み終えたあと、

借り物の言葉で生きる私たちの姿は、

決して醜いものではないのかもしれない。

誰かから受け取り、

自分なりに編み直し、

また誰かへ手渡していく。

その不完全な営みそのものが、

「ビューティフル」なのではないか。

そんな静かな問いだけが、

いつまでも胸の奥に残り続けています。

言葉というものの暴力性と美しさ。

その両方を真正面から浴びたい夜に、ぜひ読んでいただきたい1冊です。

この日記を書いていたときの読んだ本たち

(Amazonのリンクへつながります)

わたしが健やかで、集中力を保って読書するために欠かさないスーパーフルーツジュース「サジー」は、鉄分とビタミンで人にさまざまな良いメリットをもたらしてくれるそうです。

がんばるあなたに。

スキンケアが好きなあなたに。

集中してものを考えるのが好きなあなたに。

ぜひおすすめしたい商品です。

書いている人のこと

こんにちは。り📚書評家です。

いかがお過ごしですか?

・・・・

Instagramとtwitter、Lemon8もやっています。

ぜひフォローやいいねをしていただけたら嬉しいです! 

以上、り📚書評家でした~!

読者のあなたへ、kindle30日間読み放題をプレゼント🎁

現在の人気書評記事はこちら🌸

無料で「小説好き書評家の散文読書ノート」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
本を読む人は、営業も上手だ『文脈営業』
誰でも
いじめ、自殺未遂、殺人。記者として世界を訴えたかった『月とアマリリス』...
誰でも
あのときもこの瞬間も、ドイツのトップはこの女性だった『自由』上
誰でも
後に引けなくなったとき、自分の本音に気がついた惨めな30代女性『激しく...
誰でも
【炎上危機につき購読者限定コンテンツ】よく「フリーランスダンサー」って...
誰でも
限定6名!読書泊・古民家リトリート・ライター書評家NGなしキャリア相談...
誰でも
遠く離れても、人はつながれる?『雪望台からずっと』
誰でも
【炎上覚悟につき購読者限定コンテンツ】ひとりで稼ぐために思った「この子...